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本草綱目北京語の古文体翻訳 神麯

13.消食薬 2019年7月23日ブログ

45.卵泥棒(神曲)

神曲TriticumaestivumL.

 

漢薬材の中に神曲(しんきょく)という薬材があるが、

これは通常、建曲(けんきょく)と知られており、

范志(はんし)という人が初めて作ったという。

范志は中国の福建の人で、彼の祖先は泉州に住んでいた。彼の家では十羽余りの鶏を飼い、日に7,8個の卵を得ていた。ある日の事、その日もいつもの通り鶏の鳴き声を聞き、鶏が卵を産んだと思い鶏小屋に行ってみたが、卵は見つからなかった。

「誰かが、卵を盗んだのだな!」

范志は誰かが卵を盗んだのだと思った。

翌朝、彼が鶏小屋に行ってみると、大きな大蛇が一匹待ち構えていた。卵を産みだされるのを見て蛇が鶏に近寄ると、鶏は驚いて逃げてしまった。

蛇はすぐ卵を飲み込み、その後、蛇は岩間の穴に入り込み、しばらくして出て来たのを見ると、卵のため膨(ふく)れていた蛇の腹は中の卵が壊れて消化されたようで、悠々と森の中に消えて行ったのであった。

卵を盗まれて怒った范志は、何か蛇を困らせる良い方法はないかと考えた。

「そうだ!良い方法がある」

彼は木切れで卵形の物を作り、鶏小屋の巣の中に入れて置いた。翌日の朝、彼は鶏小屋に近づき、蛇が来るのを待ち伏せた。待つ間もなく大蛇が現れ、

すぐに卵を飲み込んだ。それは木で作った例の卵であった。蛇は卵を壊す為岩の穴を出入りしたが、腹の中の卵が壊れずそのままなのに驚いた。蛇は慌てて穴から這い出ると、急いで森に向かって這って行った。

この様子を一部始終見守っていた范志は、蛇の後を追って行った。蛇は大きな岩陰に生えている青い草を取って食べては、近くに流れている渓谷の水を飲み、咽喉に引っ掛かっていた木の卵を消化させてどこかへ消え去った。范志は驚いた。その青い草がどうして木の卵まで消化できるのだろう。

「その草が強力な消化力を持っているんだな。」

そこで范志は、蛇が食べたその草を刈り取り家に持ち帰った。その草の性質が猛烈だったので、小麦、青蒿(せいこう)杏仁(あんにん)等を混ぜてそれを粉にし、四角形に乾かして今の様な神曲を得るようになった。

最初は、世の中の人々がこれをそれ程、使おうとしなかったが、後に、まるで神様が作った物の様に思われる程その効力が優れているのが広く知られ、今日に至った。

「この薬は本当に霊妙(れいみょう)だ。」

と人々は感嘆した。

范志の死後、その秘方は彼の妻である吳氏によって伝えられ、その後、各地に広く知れ渡り、今日まで世の中に伝えられた。神曲は漢薬材で、小麦、杏仁、赤小豆、青蒿、蒼耳(そうじ)の粉と、辣韭(らっきょう)の自然汁を混ぜて発酵させた物で、強力な消化力を持っている。建曲は神曲に紫蘇(しそ)、荊芥(けいがい)、防風(ぼうふう)、羌活(きょうかつ)、厚朴(こうぼく)、

白朮(びゃくじゅつ)、木香(もっこう)、枳実(きじつ)、青皮(せいひ)等の薬材を加味した物で、別名、范志曲(はんしきょく)とも言う。

 

 

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