ライター養成講座 総合コース  木室ミエコに漢方取材です。

編集・ライター養成講座 総合コース

2017年夏卒業制作 林千尋さん の取材記事です。

 

自分で病気をはねのける!

注目すべき漢方の力

  バランスを整えてあらゆる不調にアプローチする

自然治癒力を取り戻す 底上げの漢方

 

漢方にどのようなイメージを持っているだろうか。占いめいたもの?

即効性がない?

まずくて飲みにくい?

私自身、なかなか原因が突き止められなかった日々の不調に悩まされていた折に、

オータニ漢方薬局の漢方薬を服用したところ、

効果と即効性にただただ感動した。

知られているようでまだまだ認知度の低い漢方は、

実は非常に高いポテンシャルを持っている。

 

「私の治し方ってね、自分で病気をはねのけるのよ。

胃腸が弱ければ 胃腸を強くして、

食べたものをしっかり消化吸収して、自分で栄養を供給できる、

自立できる体作りをしながら

弱体化した臓器を助けながら患部を立て直していくの」

福岡県は博多駅前に店を構える、

「オータニ漢方薬局」代表取締役の木室(きむろ)ミヱ子(みえこ)氏はこう語る。

平成5年に開局し、日本全国にとどまらず

海外からも寄せられる彼女への感謝の声は数え切れない。

 

 

社会人3年目、私は毎日つきまとう異常なだるさと

吐き気に苦しみ、病院をはしごしていた。

 

「検査しても異常なし、」良いと言われるものはいくつも試した。

全く改善が見られず閉口していた

ある日、

診療内科で「自律神経失調症」と診断され、抗鬱剤を処方された。

服用後すぐ不調は改善されたように見えたが、

1日寝ると向こう3日は全く眠くならないという、

霊長類ヒト科らしからぬスペックになってしまった。

そして、薬を止めるとまた症状が戻ってしまう。

「根本解決できる治療法はないのだろうか」と探し求め、出会ったのが漢方だった。

 

オータニ漢方薬局では、舌の状態・顔・全身が分かる写真と

電話での問診で、患者の体質と不調の原因を探っていく。

電話で処方を決めると、薬は自宅まで郵送してくれる。

全ての不調は、「必ずどこかの内臓が弱体化していることが原因」と考える医学である。

 

身体を冷やし過ぎず温め過ぎず、

潤しすぎず乾かしすぎず、真ん中を取る。

プラスマイナス0(中庸 ちゅうよう)の状態が

一番健康な状態と考える。

 

「あなた、胃腸が弱いのね。その不調は全部胃腸のせいですよ」

初めて電話で日々の苦しい症状を訴えると、

木室氏はおそらく電話越しに私が送った写真を

眺めながら、すぐさまこう指摘した。

 

自律神経失調症は交感神経と副交感神経のバランスが崩れている状態なので、

神経系に異常があると思い込んでいた

私は、この言葉をすぐに理解することができなかった。

他の病院では全く聞かれなかった、

かつ自分でも気に留めていなかった小さな不調も全て言い当てられた。

ストレス等 外的要因で胃腸が弱体化すると、

まず肺が熱を持つ。

漢方の世界では「熱は気を食う」と言い、

このせいで異常なだるさを引き起こす(「気」とは抵抗力、免疫力、生命力を意味する)。

 

また それにつられて肝臓も弱体化すると、

充分な血液が作られず体中に循環できない。

 

私のこのような症状や体質に合わせて処方して

もらった漢方を服用すると、

早くも2包目で明らかに体が軽くなるのを感じた。

1週間経つ頃には一気にむくみが取れ、疲れが嘘のようになくなった。

弱った胃腸に栄養を与え、肺の熱が取れればだるさが消え、

肝臓も強化されて血を作れるようになると

血液が循環されて手足の冷えも改善される。

 

濡れたタオルは冷たく、乾燥したタオルは温かいように、

余分な水分を体の外に出すというのも

冷え性改善になる、という理論らしい。

長いこと原因不明でろくな対策もなかった中、

「漢方の世界ではよくある症状ですよ」の一言で救われた。

 

1972年に日本で最初の総合的な研究機関として設立された

「漢方医学北里大学東洋医学総合研究所、漢方鍼灸治療センター」

所長である小田口(おだぐち)浩(ひろし)氏は漢方についてこう説明している。

 

「医療の分野においては、科学技術をベースにした

現代医学の進歩により、従来治療手段のなかった

疾病を治療できる様になった一方、

医療の過度の専門化・細分化のため、

患者様を総合的に診療する事が

困難になってきている。

このような状況下、患者様の心身を

一体的・総合的に診療する漢方医療への期待は

近年益々大きくなっている」

 

病院に行くほどではないけれど、

何だか毎日不調がある。

健康診断では引っかかっていないけれど、

何だか違和感がある。

毎日 我慢しながら生きている人にとって、

数値以外の所から原因を発見してくれるというのは、

精神的に非常に身軽になるものだ。

 

漢方の定義

 

「漢方」と一口に言っても、元は中国伝統医学の「中医学」であり、

日本独自に発展したものを

「日本漢方」と呼んでいる。

 

それぞれの内容についての認識や理解は諸説あるが、

簡単に触れると、

日本漢方は症状に対して処方するもの、

中医学は総合的な理論体系に基づいて

症状や体質を分析し処方するもの、とされている。

 

前者は、生薬から成分を抽出して顆粒や錠剤に製剤化したのもので、

既製品となっている。

後者は、生薬の種類や量を個人の体質や季節に合わせてカスタマイズする。

その分保険が効かず、自由診療扱いとなる。

 

オータニ漢方薬局は、

店名に「漢方」の名は付いているものの、

中医学の考え方に沿って処方している。

自由診療のため、料金は市販で買えるものに比べると

少しお高めの1日分(3包)600円だ。

どんな病気・処方であっても一律この価格である。

 

しかし 漢方の専門店の1日分1000~2000円と比較すると非常に安い価格である

日本にある漢方薬局は、先述のどちらかの流派で

処方しているが、いずれにしても診断・アプローチ

方法は医者に拠る所が大きいそうだ。

 

診断中に「気」とか「陰陽五行説」などという言葉が出てくるため、

どこか宗教的なものをイメージする人もあるかもしれないが、

中医学の理論体系とは、

中国の何千年に及ぶ経験医学であり、

中医学のバイブルとも言える

「醫方集(いほうしゅう)解(かい)」

「傷(しょう)寒(かん)雑病論(ざつびょうろん)」といった

文献に非常に論理的に纏(まと)められている。

 

「大変長い歴史の積み重ねで したためた方法は、

歴代の王に付いていた医師がずっと書き連ねてきたものです。

中国は革命で国が倒れて焚書(ふんしょ 文書を焼却する行為)

が行われて、あらゆる分野の書物が書き換えられるけど、

医学書は書き換えちゃったら死刑ものですよ。

もし(ある処方によって王様が)治ってもないのに治ったと記載して、

それを次の王様に(誤って)処方したら死ぬわけじゃない。

だから医学書に関しては、

正当な事しか書き残されてないんですよ。

何千年もかかった人体実験です。」

 

数値を基準とする西洋医学が主流の現代日本で、

「経験則」と言われるとどこか根拠がないように聞こえるが、

この説明には納得できる力強さを感じた。

 

北里大学東洋医学総合研究所の、

精神神経学会専門医であり、

日本漢方および中医学にも精通している遠藤(えんどう)大輔(だいすけ)氏も、

経験則を数値化してデータに落とし込む難しさを理解している。

 

「西洋医学の方法論というのは、

手術した場合としなかった場合、

それぞれどのような結果が見受けられたか等、

比較試験があってこっちの方がいいっていうものが標準治療になるわけです。」

同じ癌だったとしても、

眩暈がする人と胃が悪い人とで処方が変わる場合もあり、

西洋医学のように

体質関係なく同じ薬を投与した際に効いた・

効かない、の判断ができないのだ。

 

しかしながら、こうも続けている。

「アトピーの子で、ずっとステロイド塗ってたのに

漢方薬飲んだら塗る量がどんどん減ってオフになったとか、

不眠の人って西洋薬止めると眠れなくなっちゃう人多いんですけど、

結果 服用しなくても大丈夫になったとか、これはおもしろいな、と」

 

東京の西八王子にある

「イセヤ漢方薬局(中医学)」店主であり、

武蔵野東医学研究会副会長の金子(かねこ)勲(いさお)氏も、

そのような漢方の可能性に期待を持っている。

 

「数値的には何も問題ないけど、本人からしたら調子が悪くてとても健康だと思えない。

こういう時はどうしたらいいの?ってなった時に(漢方という)違うモノサシを持ってきたら、

もしかしたら西洋医学で見つからないような

部分が見つかるんじゃないかな、と思います」

 

西洋医学と東洋医学の良い所取りをするという選択

 

木室氏は元々、当時非常に難易度が高かった

「薬種商」試験に一発合格し、西洋薬局に店長として勤めていたが 

従事する中で、根本治療することが難しい、

西洋薬の対処療法の壁に行き詰まりを感じていた頃、

台湾人の漢方の先生に出会う。

転職後 残業続きで、疲労感や便秘、さらに暗記力の低下に苦しんでいた頃である

その先生が問診で木室氏の症状をつかみ

処方をすると、お昼1包・夕方1包の服用で、

大音量の目覚まし時計が耳元で30分以上鳴り続けてやっと起きる生活が一変した。

翌朝一瞬で 飛び起きれるようになり、身体もだるくなく、便秘も改善した。

木室氏の、漢方に対する考えが変わった瞬間だった。

 

西洋医学と東洋医学のどちらにも全力で従事してきた木室氏は、

「両者の良いとこ取りをしたらいい」と話す。

腫瘍が大きくなり早急に切除した方がいい場合は、

西洋医学が強く、術後の不快感を和らげるのは漢方が強い。

その好例として人工透析患者を治療した時の体験談を聞かせてもらった。

「透析始めちゃうと血小板、白血球、赤血球が激減して、

(身体的に)すごくきついんですって。

以前は、透析始めた患者さんには漢方お渡しするのを中止していたんですけど、

ある患者さんが 透析前に処方された

漢方薬を飲んだら、透析特有の体の痒みや

全身の血管の盛り上がりが出なくて、

透析中きつくないって言うの。

それから透析患者さんにも漢方薬の処方を始めたんです」

 

この他、ある乳がん患者さんの漢方服用後、

患部から毎日大量に毒素が膿や血の形で出血し、

それに伴いみるみる顔色が良くなって回復したという例など、

 

木室氏本人が綴(つづ)るブログに体験記としてたくさん見ることが出来る。

外科的な分野は西洋医学が強いとのことだったが、

非常に興味深い話がある。

 

木室氏の父が72歳の時に大型チェーンソーで自分の左足をほぼ切断してしまい、

辛うじてアキレス腱と腓骨のみ付いているような状態だった。

医者が

「切断しなければいけない足だが、今切断すると本人のショックが大きく、

腐ってからの方が良い」と、

一時ボルトで繋げる手術をしてくれた。

入院中、木室氏が処方した漢方を服用すると、

血が噴き出して止まらず、ガーゼの交換が大変だったそうだ。

血が流れているおかげか、医者は「足が腐らないな」と不思議に思っていると、

結果 足も腐らず切断せずに済んだそうだ。

怪我でも癌でも、基本的に瘀(お)血(けつ)(滞った血)を出すことで毒素を出す、

という手法があるようだった。

 

快食・快眠・快便が健康の指標

 

漢方は体に栄養を与え、

正常な働きへ戻すという意味で体に優しいイメージがあるが、

やはりまずは「快食・快眠・快便」の3要素が基本となる。

季節・その土地に合った生命力がある食材をとる、

22時~2時の間は睡眠をとる、お通じを毎日しっかり出せる、という形を作る。

「排便力が弱いと、汗や余分な水分を外に出す力や免疫力も一緒に落ちてしまっているということ。

快食・快眠・快便がそろっていれば病気は治っちゃいますよ」

例えば血液不足が原因で低体温である場合は快眠できない、

肝臓が高ぶってると 筋肉の筋が張って眠れない。

自分でいくら努力しても改善できない時に

漢方を利用してバランスを整える。

逆に、漢方を飲み始めて先述の3要素に問題がなくなったら、

それは服用の止め時であると判断する指標にもなる。

 

副作用の捉え方

 

もし使い方を間違えるとどうなるか。

1993年3月、

「小柴(しょうさい)胡(こ)湯(とう)という漢方の副作用によって10人が死亡」

という報道があった。

それまで漢方は副作用が少ないと考えられていたので、

この一件は非常に大きな衝撃を与えた。

この件について木室氏、金子氏はこう説明している。

「小柴胡湯は冷やして乾かすような作用があるので、

例えばA型肝炎だったら炎症を抑えてあげる、

腫れてむくんでる時は水を抜いてあげることができる。

肝炎の中でもどちらかというと初期のうちに効きます。

しかし、肝硬変みたいに肝臓がどんどん悪くなっていって、

最後しぼんで線維化して固くなると、

もう炎症もなくなって乾いてるのに更に乾かして冷やしてしまって、

死亡例になってしまったんですね。

世間ではこれを副作用って言うんですよ。

しかしこれは、誤飲とか誤用って言われるようなものですね。

誤った治療が副作用ととらわれちゃってるケースも結構あります」(金子氏)

 

「小柴胡湯は風邪薬です。

5日程の服用で中止すべきところを、

肝臓に効くと言って何年も処方してしまった。

その結果、胃腸を冷やし過ぎて(食欲がなくなり栄養が取り入れられなくなって)、

肺が傷ついてしまい、間接性肺炎になる危険性もありますよ」(木室氏)

 

漢方薬で副作用と呼ばれるものは大概が症状と体質が合っていないことに起因する。

副作用とは主作用に対する副作用なので、

本来は悪い意味では使わないのだが、

いつの間にか副作用イコール悪い症状を指すようになってしまった。

 

漢方服用を家族に止められた患者もいる。

木室氏の元に来た患者で、

「漢方郵送したら受け取り拒否で返ってきた人がいたんですよ。

家族が、漢方専門病院に入院した時に処方されてすごい目にあったって。

漢方薬に対して強いアレルギーを持ってしまって、

(漢方が)着いたとたんに送り返されたんです。

それで大喧嘩して、家を出て暮らし始め

でも、彼女の体が改善する状況を見られて

ようやく飲んでいいよって事になりご家族の元に帰られた」

 

中医学は非常に奥が深く、

知識を自分の血肉にするまで大変に時間がかかる。

「中途半端な知識では人殺しになりますよ」と、

誤用の恐ろしさを語る木室氏の表情は、

怠慢な医者に対して強い憤りを感じているようだった。

 

ところで、

電話と写真のみの処方で触診などは特にしないわけであるが、

誤診の可能性はないのだろうか。

「自分の不調の原因がどこから来ているのか 

全く分からない人も結構います、

そういう時は原因をつかめる迄 

徹底して問診するの。

(中医学の体系が確立されているので)論理に合っていないと

「あなたさっきこう言ったけど、こうじゃない?」って、逆に聞く。

例えば、病院で診断されてないから

自分には「できもの」は一切ないと思ってるけど、

舌の裏の静脈血管が黒く浮き出て毒素にまみれてるのが分かるから、

どこかに絶対あるはず」そのような時は 

腫瘍を取り除く漢方薬を試薬として店頭では一回分 

電話問診での遠方の方では 1日分 3日分 程服用して頂く

毒素抜きが必要でない場合 

1包みで腹痛や下痢

食欲不振という症状が発生します

 

しかし 必要な場合 逆に飲みやすく 

チョコレートやきな粉の味がするとか 食欲が増進しました

食べ物の味がおいしくなりましたと言われる

機械で検査しなくても 服用して頂く事で

症状を掴めるのが漢方薬でもあります。

 

医療技術の発達で、CT、MRI、

血液検査の恩恵を受けることができる時代ではあるが、

問診の方が原因を掴むのが早い時もある。

問診であまりにおかしい、と思う場合は患者に試飲をさせ、

効き目はもちろんのこと味も確かめてもらう。

「まずすぎて飲むのが辛い!」というのは体に合っていないというヒントになる。

 

漢方を選択肢の1つに入れるという生活

 

現代社会に生きる私たちにとって、

22時に就寝し、3食自炊するなど、全てに気を配るのは少しハードルが高いかもしれない。

個人的には、スッキリする程度に体を動かしたり、

美味しく食べられる量を食べたり、

ゆっくりお風呂で温めてあげたり、体の声を聴いてあげることが大切なのではないかと考える。

自分ではどうにもできなくなった時、

漢方を選択肢の1つとして生活に取り入れ、気持ちよく年を重ねていきたい。

 

電話越しに聞く木室氏の声は、柔らかく上品だが

パワーもある。

大柄な人を想像していたが、

やっと会えた「本物」はずっと小柄だった。

「このエネルギーはこの華奢な体のどこから来るのか」

と思う程元気はつらつとしていて、

一緒に働くスタッフがいる空間にも柔らかく力強い雰囲気が漂っていた。

木室氏は今日も、1人1人に寄り添ってみんなの健康をコーディネートしている。

 

林千尋様のブログはこちらです⇒http://chii06.com/kanpo-chinesemedicine-2/